関の小刀を恐れた堤の小坊主
どんな伝承か
寛政・文化のころという。高知の農人町に住む大工頭野村紋之丞は、強く大柄な男だった。ある村の小社の造営を頼まれたが、落成の際に意見が食い違って破談となり、社を壊して帰る途中、堤の上に小さな坊主が現れて相撲を求めた。紋之丞は怪しんで捕らえ、水の上へ投げたが、坊主は水面を歩いて戻り、また相撲を求める。紋之丞が帯びていた関の小刀を抜いて胸を突くと、そばの井流の中へ逃げた。紋之丞は漁を好んでよく船を出したが、そのたびにこの小坊主が水面に現れ、小刀を見せると沈んで消えた。同船の者には見えなかったという。後にその小刀を船中に忘れ、取りに戻ったときにはもう失われていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第12巻』は、四国四県(香川・愛媛・徳島・高知)の伝説を話型ごとに集めた伝説集成の一巻である。神々の争いや大人の足跡、弘法大師の彫り残しや麦の種、英雄の誕生、長者、人柱、蛇聟、狼の報恩、化猫退治、首切れ馬、夜泣石、地蔵の霊験などを、町村誌や地方の伝説集、昭和五十三年度立命館大学説話文学研究会の採集調査稿から採る。百三十九話に通し番号を付け、各話に伝承地と出典、高木・柳田の分類名を添え、県別の〔類話〕と〔文献〕を続ける。