菅笠で水を飲ませた大師の川
どんな伝承か
海部郡海南町の浅川東に伝わる話。頭が割れるほど暑い日、弘法大師が通りかかった。水が飲みたくて川へ行ったが、手ではすくえない。見ると農家の婦人が洗濯をしていたので、水を飲ませてくれと頼んだ。婦人は失礼ながらと言って自分の菅笠で水をすくって飲ませた。大師は疲れた身に喜び、海部川の水が涸れてもこの川だけは水が青むほど湧くぞと言い残した。婦人は不思議な遍路だと後を追ったが見失った。村人は、それはお大師さんだったと語り合った。今も日照りで水が絶えても、この川は青白むほど水をたたえている。国の天然記念物の鰻の石碑が立つ所が、大師に水を与えた場所だという。
原典より
頭の割れるような、その暑いその時にな。—— 日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第12巻』は、四国四県(香川・愛媛・徳島・高知)の伝説を話型ごとに集めた伝説集成の一巻である。神々の争いや大人の足跡、弘法大師の彫り残しや麦の種、英雄の誕生、長者、人柱、蛇聟、狼の報恩、化猫退治、首切れ馬、夜泣石、地蔵の霊験などを、町村誌や地方の伝説集、昭和五十三年度立命館大学説話文学研究会の採集調査稿から採る。百三十九話に通し番号を付け、各話に伝承地と出典、高木・柳田の分類名を添え、県別の〔類話〕と〔文献〕を続ける。