麦の謎かけに引き返した腰越の松
どんな伝承か
鎌倉市腰越の下町に一本の松があった。西行がその松のところで、籠と鎌を手にした美しい娘に出会い、どこへ行くのかと尋ねると、娘は冬は来て夏枯れ草を刈りに行く、と答えた。意味がつかめない西行は松の根に腰を下ろして考え込み、冬に育って夏に枯れる草、つまり麦のことだとようやく悟った。これほどの娘がいるのなら、村へ入ればどんな歌よみに出会うか分からないと恐れをなし、西行はその松から引き返したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。