鰻を断って祈る山高の安産の神
どんな伝承か
武川の山高にまつられる幸燈宮は、軍神であると同時にお産の神でもある。祭神の稚日霊女尊は女の神で、みずからお産のたびに重く苦しんだ。その苦しみを知るゆえに、同じ思いをする者を救おうという慈悲から、産を軽くしてくださるのだという。山高の氏子には産の重い者が一人もおらず、産で命を落とした者も昔から聞かないと語られる。他村の者でも鰻を断って祈れば安産になるとされ、神前には底の抜けた杓が供えてある。水が漏れるようにたやすく生まれよという願いで、年ごとに焼かれるその数はおびただしいという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。