手拭をかぶって踊場に集まる猫たち
どんな伝承か
戸塚の宿内に水本屋という醤油屋があった。あるころから、たくさんある手拭が毎晩一本ずつなくなる。不思議に思った主人は手拭に紐をつけ、その端を自分の手に結んで寝た。すると飼い猫が手拭をくわえて逃げようとする。主人は飛び起きて追ったが、何に使うのか見当がつかない。その後のある晩、踊場という所の近くを通りかかると、今夜は笛子が来ない、水本のは熱いおじやで舌を焼いたそうだ、という話し声が聞こえてきた。驚いて帰り家人に尋ねると、たしかに猫におじやを食わせたという。近所の猫たちは毎晩ここに集まって踊り、頭にかぶる手拭を持ち出していたのであった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。