阿蘇沼のおしどりが結ばせた鴨鴛寺
どんな伝承か
保元のころ、平入道真円という殺生を好む男がいた。あるとき阿蘇沼でおしどりを一羽射とめ、籠に入れて帰った。その夜、美しい女が訪ねてきて、あなたは今日わたしの夫を殺したと嘆く。身に覚えがないと言い張る真円を、女は嘘をついてはならぬと責め、日が暮れれば誘い合ったものを、真菰がくれの独り寝はつらい、という意の歌を残して去った。その後ろ姿はおしどりの雌であった。夜が明けて外を見ると、昨夜のおしどりが雄と嘴を合わせて死んでいた。鳥さえこれほど情が深いのかと心を打たれた真円は出家し、沼のほとりに草庵を結んで池澄山鴨鴛寺と名づけた。これがこの寺の起こりだと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。