足指に糸をかけた空滝の淵の蜘蛛
どんな伝承か
暑い夏の昼下がり、一人の農夫が空滝の近くの畑から下りてきて、滝壺のほとりの岩に腰かけて昼飯をとり、涼しい風に吹かれながら草の上に横になった。まだ寝つかぬうちに、一匹の蜘蛛が体をはい回り、足の親指まで来ると立ち止まって糸をかけ始めた。蜘蛛は糸を引きながら滝壺へ落ちていく。不審に思った農夫が糸をほどいて枯れた木の株に巻きつけておくと、淵の底からヨイショという掛け声が響き、根株は音を立てて抜け、水しぶきを上げて沈んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。