枕が飛び込んだ万右衛門の榎
どんな伝承か
鎌形の落合という所に、大きな家をかまえた名主の万右衛門が住んでいた。ある夏の日、家の者が出払い、手伝いの娘が一人で留守番をしていた。裏の川原から涼しい風を入れていると、突然恐ろしい物音がして、木の枕のようなものが座敷へ転がり込む。娘がそっと覗くと、その枕はまた音を立てて転げ出し、縁側から庭の榎に飛び上がって、木の股の穴へ入ってしまった。帰宅した万右衛門らが穴を覗いても何も見つからない。何年か後、その榎を伐ることになり、木こりが一斧入れると真赤な血が流れ出したので、万右衛門は驚いて伐るのをやめたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。