モッコの一言で連れ戻された親
どんな伝承か
旗立ゾイドウを抜けて奥谷に出て、高藤山のほうへ向かうと左手に新堰がある。その付近にある洞窟は、昔ここで親を捨てたのだと言い伝えられてきた。あるとき、息子がモッコに親を乗せて捨てに来た。親とモッコをその場に置いて急ぎ帰ろうとすると、親が背に声をかけた。モッコをどうするのか、と。息子は立ちすくんで震えるばかりだったが、いらない、置いていくと答えて走り去ろうとする。親はまた呼びとめ、次にお前が来るときはどうするのか、と諭すように言った。息子は親の顔を見返すうちに泣き崩れ、捨てた親にすがりついた。そして親をふたたびモッコに乗せて家へ戻り、それきり親を捨てることはなくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。