玉前神社の縁結びとおこもりの夜
どんな伝承か
一宮町の玉前神社は縁結びの神として若者の信仰が厚く、七月十三日の夜には社殿に一晩中こもる若者が多い。古くから里人はこの夜を男女の縁を結ぶ神の夜としてきた。『南総俚俗』にはある村の庄屋の息子の話が載る。彼はふと見かけた身元も知れぬ娘に恋い焦がれ、翌年の祭礼の夜に神前で再会すると人目もはばからず契りを願った。娘はただ頷いて社の奥へ去ったが、ほどなくふさわしい使いが立ち、身分や財産の差、父や里の反対をことごとく乗り越えて二人はめでたく結ばれたという。以来、玉前神を結ぶの神と崇める噂は長生・夷隅・市原の三郡に広まり、婚儀の日には鶯や蝶を歌う祝い唄を歌って囃す古例が残る。
原典より
此の国の若者は、わけて一の宮の玉前神(一の宮)を結ぶの神として信仰することが厚いといふ。—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。