空椀祭りが伝わる汐見様
どんな伝承か
北松浦郡の小値賀町に伝わる話である。新田を開くとき、どうしても汐止めができなかった。紀州熊野から来た椀売りが、己年生まれで片目、肩に横伏せを当てた者を人柱にすればよいと言ったが、調べてみるとその条件に当てはまるのは椀売り自身であった。椀売りはみずから人柱になった。いまは汐見様として祀られ、十一月には空椀祭りが行われる。供える物がなく、残された椀に水を盛って供えたからだという。新田橋のあたりの魚には片目が多く、椀売りの娘は父を尋ねて来て、雉も鳴かずば、と歌を詠んだと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第13巻(山中耕作・宮地武彦(執筆・整理)/荒木博之(解説)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第13巻――北九州(福岡・大分・佐賀・長崎)』は、福岡・大分を山中耕作、佐賀・長崎を宮地武彦が執筆・整理し、荒木博之が解説を担った伝説資料集の一巻である。姫島、うつぼ舟、百合若大臣、黒髪山の大蛇退治、平家谷、炭焼小五郎、河童、白米城など、北九州四県に伝わる伝説を題目ごとに収める。各題目は口承を重んじて選んだ例話を冒頭に据え、県別の類話を梗概にして伝承地と出典名を添え、近世以後の史料を文献として抜き出す編み方をとる。