蛤水道の堰を落としに来たお万
どんな伝承か
六百年ばかり昔、蛤岳に大野川の源があったという。水に乏しい三田川と東脊振のため、鍋島家の家来成富兵庫茂安が農民を集め、蛤岳の中腹を掘り抜いて水道を通した。おかげで両村は潤ったが、今度は福岡県側が旱魃に苦しむようになる。那珂川町別所の人々はくじで堰を落とす者を決め、当たったのは夫を亡くしたばかりのお万であった。お万は乳呑み児を抱いて小川内までたどり着き、お万止りという自然石の下に泊まって機会をうかがったと語られる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第13巻(山中耕作・宮地武彦(執筆・整理)/荒木博之(解説)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第13巻――北九州(福岡・大分・佐賀・長崎)』は、福岡・大分を山中耕作、佐賀・長崎を宮地武彦が執筆・整理し、荒木博之が解説を担った伝説資料集の一巻である。姫島、うつぼ舟、百合若大臣、黒髪山の大蛇退治、平家谷、炭焼小五郎、河童、白米城など、北九州四県に伝わる伝説を題目ごとに収める。各題目は口承を重んじて選んだ例話を冒頭に据え、県別の類話を梗概にして伝承地と出典名を添え、近世以後の史料を文献として抜き出す編み方をとる。