塩井の池に映った阿佐羅姫と鬼八
どんな伝承か
『日向見聞録』は、三田井村に鎮座する十社大明神の由来をこう伝える。大明神が遊覧して塩井の池のほとりに立つと、池の底に美女の姿が映って見えた。恋い慕った明神が山中をくまなく捜させたところ、この山には鬼八という邪神がおり、その美女は阿佐羅姫といって鬼八の妻であった。明神が妻に迎えようとしても鬼八は渡さず、両者の合戦は幾度にも及んだ。傷を負った鬼八の血は泉のように流れ、草でその血を拭った場所を血草が原と名づけた。田部大臣が明神を助けて鬼八を討ち、体を三つに分けて頭と手足と胴を三か所に埋めた。大臣は忠功により朝日大臣の名を賜り、その子孫は今も絶えないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。