野焼きに焼かれた臨月の雌蛇
どんな伝承か
昔、永の内と馬生木の境にある山の草場に、夫婦の蛇が住んでいた。雌蛇は臨月で、間もなく子を産むところだった。そこへ村の百姓が蕎麦を蒔くため焼畑の支度を始め、明日はこの草場を焼くというので草を刈り払った。その晩、雄蛇が百姓の夢枕に立ち、子が生まれるので動けない、一週間だけ火入れを待ってほしいと頼んだ。百姓は植付けが遅れるとして断る。雄蛇はせめて一日待ってくれと言い置き、産を早める薬をもらおうと三田井の御橋にいる久太郎水神のもとへ急いだ。ところが岩戸坂で振り返ると、馬生木の方角に煙が上っている。慌てて戻ったときには山は焼き払われ、逃げられなかった雌蛇は焼け死んでいた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。