弘仁二年に生まれた胝大夫と嫗岳明神
どんな伝承か
嫗岳大明神の祭神は大己貴命であるという。古老の伝えでは、昔、豊後国の女のもとへ夜ごと男が通い、女は身重になった。母の教えで娘は男の水色の狩衣の頸髪に針を刺し、賤の緒環を付けて後を追うと、豊後と日向の境の優婆嶽の下にある大きな岩屋に入っていた。大蛇は自ら祖母嶽大明神と名のり、腹の子は男子で弓矢打物にかけては九州二島に並ぶ者がない、大神惟基と名づけよと告げた。女は弘仁二年三月五日に男子を産む。子は大太と呼ばれ、夏も冬も手足があかぎれたので胝大夫といわれたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。