米原村に残る長者屋敷の由来
どんな伝承か
長者屋敷はやはり米原村にあると『肥後地誌略』は記す。里の者の説では、昔ある公卿の娘が美しさで知られ、長年観音を信じていた。十六になり父母が縁組を計ると、娘は初瀬寺に七日籠って仏意に任せたいと願い、参籠して祈った。すると観音が夢に告げ、汝の夫は都にはおらず、肥後国菊池の郷米原の賤しい男である、早く尋ね下れ、と言う。娘は前世の報いを嘆いたが、父母は仏勅ならばと許し、侍女十余人を連れて京を出て肥後へ下り、米原村でその男を尋ね当てて夫婦となった。以来大いに富み、のちに参内して宝物を献じ長者の号を賜り、米原長者と称したという。ほかに踏切、婢女の石像、団子の土、金塚などの旧跡も併せて記している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。