針の立った跡から湧いた清水
どんな伝承か
乙千屋の百姓の家で、娘が機に向かっていた。そこへ身なりの粗末な旅僧が立ち寄り、水を一杯ほしいと乞う。一日で織り上げよという父の言いつけに背く叱責を覚悟のうえ、娘は手間をかけて水を汲み、差し出した。僧は娘の心根に礼を言い、この針の立つ所には清水が湧くと告げて、一本の針を残して立ち去る。帰ってきた父は怒って娘を打ちすえたが、そのはずみに針が落ちて地に突き立ち、そこから清水が湧き出したという。僧は後に弘法大師と知れた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。