唐傘の婆を海底へ引いた沖の瀬の大蛸
どんな伝承か
下浦に老いた夫婦が住んでいた。夫はリュウマチで長く床につき、蛸が食べたいと言う。妻のおかめ婆は唐傘をさして海へ出かけ、沖の瀬の岩に腰を下ろすと、大きな蛸の足が一本のぞいていたので切り取って持ち帰り、夫に食べさせた。夫の具合がよくなるので婆は毎日一本ずつ切り続けたが、残りが一本になったとき欲を出し、蛸の胴へ刃物を立てようとした。怒った蛸は婆を海底へ引きずり込む。夫は岩まで来て海の底に唐傘の婆を見つけ、そこへ行こうとして溺れ死んだ。三月の干潮の日に岩から覗くと、今も婆の唐傘が見えるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。