桜谷で善助だけに実った蜜柑
どんな伝承か
曽於郡大隅町の菅牟田にある桜谷の近くの村に、善助という若者が住んでいた。ある日、桜谷へ入って澄んだ泉のかたわらで休んでいると、枝もたわわに実った蜜柑が目に留まった。持ち帰って家の者と食べるとうまい。その後もたびたび採りに通った。噂を聞いた村の者たちが出向いても、蜜柑の木は見つからない。善助が親孝行で正直だからだろうと皆は言い合った。やがて善助は通うのが面倒になり、一度にごっそり採ろうと大きな籠を背負って桜谷へ向かった。ところが木は影も形もなく、あたりを捜し歩いても、ついに見つからなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。