三石山の穏田に招かれた覚林
どんな伝承か
本城の北に三石山という小山があり、地勢のすぐれた幽勝の地で、古くから山中に神仙の隠れ家があるといって土地では穏田と呼び、里人がみだりに入ることを禁じていた。寛永十二年に瑞光寺が焼け、今の地へ移して再建している最中、住職の覚林が花芝を採ろうと三石山に登り、迷い込んだ先の広い野に見たこともない大きな屋敷を見つけた。水を乞うて入ると翁が畑を耕しており、家の柱も壁も畳も青かった。奥には十四、五の美しい娘がいた。軒先の金柑を所望すると娘が枝ごと折ってくれ、翁は他言を禁じて再訪を促した。帰った覚林の話は郷役たちを驚かせ、金柑は本府や福昌寺にも贈られたが、寺に挿しておいた枝はいつしか見失われた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。