天城岳の神の子となった娘と五色の幟
どんな伝承か
若い夫婦が天城岳の裾のフナゲの作場に住んでいた。夏の夜、夫が漁に出て妻が子らと夕涼みをしながら天城岳を眺めていると、光のようなものが見えて妻はしばらく立ちすくんだ。まもなく三人目を身ごもり、美しい女の子が生まれる。天城岳からは不思議な光が舞い降りていたという。七つになった年のある夜、漁から帰った夫が見ると娘の姿がない。嘆く夫婦の夢枕に娘が立ち、自分は天城岳の神の子だと告げた。夜明けに天城岳を仰ぐと、頂から五色の雲が降りて中腹で大幟になった。夫婦は庭の松の根に娘の名をつけて祀り、のちに夫がユワトシ神に遭った折には、娘が父を田へ投げ飛ばして命を救った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第15巻(山下欣一・遠藤庄治・福田晃(編集執筆)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第15巻』は、山下欣一・遠藤庄治・福田晃が奄美・沖縄本島・沖縄先島の編集執筆を分担し、福田晃が全体をまとめた伝説集である。島々の口承伝説を、市町村の民話集や大学の口承文芸研究会の採集稿、近世の文献から集め、天地や人類の始まり、島建ての神、キジムナー、蛇婿、津波、御嶽や墓の由来などを収める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、類話は地域別に配列する。