耳を切られた鼠が渡った前島
どんな伝承か
伊平屋村字田名に伝わる話。漁に出ようとした漁師が、鼠に海道具をすべて噛み切られていた。怒った漁師は鼠を捕らえ、海道具のシーグ(小刀)で両耳を切って逃がした。のちに道具を揃えてサバニで漁に出ると、前島(伊是名)の海の方から耳を切られた鼠を先頭に、鼠の群れが集団を組んで泳ぎ寄ってきた。漁師は魂が抜けるほど驚いてひざまずき、切ったのは自分ではなく前島の者だと詫びた。鼠たちは前島へ渡り、稲などすべての作物を荒らした。この話を聞いた村人は漁師をよくやったと褒め、区長に推して役人を務めさせたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第15巻(山下欣一・遠藤庄治・福田晃(編集執筆)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第15巻』は、山下欣一・遠藤庄治・福田晃が奄美・沖縄本島・沖縄先島の編集執筆を分担し、福田晃が全体をまとめた伝説集である。島々の口承伝説を、市町村の民話集や大学の口承文芸研究会の採集稿、近世の文献から集め、天地や人類の始まり、島建ての神、キジムナー、蛇婿、津波、御嶽や墓の由来などを収める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、類話は地域別に配列する。