蚊が絶えた山の田の孝女の願
どんな伝承か
旧旭村の山の田に、親孝行な娘が住んでいたという。母親が病がちなので年ごろになっても嫁に行かず、ひたすら母の世話をして日を送っていた。家が貧しく、夏になっても吊るべき蚊帳がない。それで夜通し団扇であおいでいたが、そのあたりはとりわけ蚊の多い場所で、とても追いつかなかった。苦しさに堪えかねて近くの洞光院の本尊、釈迦如来に願をかけると、その一心が通じたのか、その夜から蚊が来なくなった。娘が住んだという家の跡は今では水田になっているが、この辺りは真夏でも蚊が一匹も出ないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。