村中が聾のふりをした聾石
どんな伝承か
東春日井郡旭町大字新居(現豊田市)には聾石という石が伝わる。尾張の殿様が定光寺参詣の際に通ったという御成街道の道端にあり、慶長十五年(1610)、名古屋築城の手伝いを命じられた大名が石材を運ぶ途中に大石を一つ落としてしまった。拾い上げるのも面倒だと考えたその大名は村おさを呼び、役人が詮議に来ても何も答えるなと脅して立ち去った。翌日、詮議に来た役人に村人たちは皆、耳を指して口をパクパクさせるだけで答えなかったため、役人は聾の多い村だとあきれて帰った。これがこの石を聾石と呼ぶようになった由来で、石に小石を供えて祈ると聾が治るという言い伝えも生まれたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。