牛が現れた淵と出牛の地名
どんな伝承か
ある日、日本武尊が皆野町の金沢を通って今の出牛まで来ると、大雨の後で川が増水しており、渡ることができずに困っていた。すると一頭の牛がとある淵から姿を現して尊の前に座り、尊はこれにまたがって向こう岸へ渡ることができたという。牛が出てきたことから出牛と名づけられ、牛の現れた淵を村人は出牛淵と呼んでいる。ただし地名にはもう一つの説もある。三、四百年前、徳川の世の厳しい弾圧の中でもこの地には熱心な切支丹がいて会堂を建て信仰を守っており、神を指すポルトガル語のデウスがなまって出牛の字が当てられたのだという。
原典より
或る日、日本武尊が金沢(秩父郡皆野町)をお通りになり、今の出牛まで来られると、大雨の後とて増水し、川を横ぎることができず、困りはてておられました。—— 秩父の伝説と方言 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父の伝説と方言
『秩父の伝説と方言』は、秩父市教育長鶴沢福松の序を付し、編集委員が執筆整理にあたって編んだ秩父地方の伝説と方言の集成である。秩父市と秩父郡に伝わる伝説を集め、武甲山麓のジジイ・ババア石、橋立鍾乳洞の悪龍、畠山重忠や坂上田村麻呂にまつわる話、伐ると祟る天狗松などを語り口調で記す。伝説は石・水・塚・屋敷跡・山と人物・地名・社寺および城跡・木に関する八つの部に分け、話によっては他地方の類話を注記する。