業平の筆が根づいた弁天社の葭竹
どんな伝承か
さいたま市桜区神田の弁天社を囲む池には、葭竹と呼ばれるセイコノヨシが生えている。東国へ下った在原業平がこの社に籠って歌道の栄えを祈り、手にしていた筆を池に挿すと、それが根づいて育ったのだと伝わる。社の脇には業平の歌を刻んだ碑があり、裏には神田村の神山清宗が仁寿元年に建てたと記されている。『新編武蔵風土記稿』は、冬に葉が枯れても幹は枯れず春にまた芽吹く不思議な葭だと記し、弘法大師の加持によるという別伝も載せる。業平を慕って入水した娘を祀った社ともいわれ、葭竹は市の天然記念物になっている。
原典より
弁天社をめぐる池中に、葭竹(イネ科のセイコノヨシ)が自生している。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。