落城の姫が溺れた七つ釜の片葉の葦
どんな伝承か
川越城址の下を流れる川の葦は、みな片葉だと言われている。戦国時代、敵に攻められて川越城が落ちたとき、城主の姫君は侍女とともに逃げ出したが、城を出てすぐ二人とも近くの川に落ちた。誰も助けてくれる者はなく、岸に生えた葦の葉にすがったものの、葉はするすると裂けてしまい、二人は溺れ死んだ。その恨みで、城址の川の葦は片葉になったのだという。別の伝えでは、浮島稲荷の裏手に湧く七つ釜という水場が舞台で、落城の夜に姫君と乳母が暗闇の中で落ち、葦の葉がちぎれて命を落としたとされる。七つ釜の片葉の葦は川越の七不思議の一つに数えられている。
原典より
側ヶ谷戸の藤橋付近の川岸に簇生する。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。