小僧に化けた高巌寺の古狸
どんな伝承か
下谷車坂にあった高巌寺には古狸が棲みつき、小僧の姿に化けては人をたぶらかした。近隣の者は高巌寺小僧と呼んで恐れ、寺内に祠を建てて祀ったが、狸を神にするのもおかしいというので小僧稲荷と名づけたという。寺の前は深い大溝で、夜に立小便でもすれば、大きくなったり小さくなったりする三つ目小僧が現れ、宙にぶら下がった大提灯が点いたり消えたりして動き出す。驚いて逃げれば必ず溝へ投げ込まれ、怪我をする者も少なくなかった。それゆえ近所の者は朝一番に門前と境内を掃き清めたと、車坂あたりの古老が語り伝えている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
江戸傳説(佐藤隆三)
『江戸傳説』は、佐藤隆三が著した江戸と東京の伝説集である。将門の首塚、番町皿屋敷、お玉ヶ池、置てけ堀、縁切榎、矢口渡など、市中と近郊の塚・池・坂・井戸・寺社にまつわる由来譚や、化け狐・猫又の怪異を、『江戸名所図会』『将門記』などの記録を引きつつ語る。目次に四十の項を番号順に並べ、口絵の図絵と目次番号に対応した伝説分布図を添え、巻末に資料参考書目を付す。