九枚の皿を数えるお菊の声
どんな伝承か
家光の代、五番町の中小性組の屋敷地が召し上げられ、天寿院の御殿が営まれた。院の死後に御殿は取り壊され、怪しいとされた井戸も埋められて、跡地は旗本三人に分けられた。そのうち五百坪を得た青山主膳は新たに井戸を掘り、古井戸と人骨に当たったが構わず移り住む。主膳は、処刑された盗賊の娘で奴として使われていたお菊に言い寄り、拒まれた。承応二年の正月、家宝の青磁皿を割ったお菊は右手の中指を切り落とされ、処刑の日を知らされて古井戸へ身を投げる。のちに夫人の産んだ男児には右の中指がなく、夜ごと井戸のほとりに鬼火が燃え、皿を数えては一つ足らぬと泣く声が明け方まで続いた。人は去り、青山家は断絶したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
江戸傳説(佐藤隆三)
『江戸傳説』は、佐藤隆三が著した江戸と東京の伝説集である。将門の首塚、番町皿屋敷、お玉ヶ池、置てけ堀、縁切榎、矢口渡など、市中と近郊の塚・池・坂・井戸・寺社にまつわる由来譚や、化け狐・猫又の怪異を、『江戸名所図会』『将門記』などの記録を引きつつ語る。目次に四十の項を番号順に並べ、口絵の図絵と目次番号に対応した伝説分布図を添え、巻末に資料参考書目を付す。