蕎麦を食べた小僧と池の大蟇
どんな伝承か
麻布本村町の渡辺子爵邸の内に、蟇ヶ池と呼ぶ池が残っている。昔、池のほとりに長者が住んでいたころ、一人の小僧が訪ねてきて、どんな天災があってもこの家は難を免れるようにするから、池だけは埋めないでほしいと言った。長者は不審に思ったが蕎麦を振る舞い、小僧は門を出るなり消え失せた。のちに下男たちが泥をさらおうとすると、池から小犬ほどの蟇が飛び出し、打たれて蕎麦を吐いた。長者は小僧の正体を悟って池さらいをやめ、蟇を丁重に池へ戻した。まもなく大風の日に近所から火が出て屋敷に燃え移ると、池から大蟇が這い上がり、口から潮のように水を吹いて火を消し止めたという。以来この付近には火事がないと言われてきた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
江戸傳説(佐藤隆三)
佐藤隆三編『江戸傳説』を全42話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。