高輪の借家に来た二度と現れぬ魚屋
どんな伝承か
小山内薫の一家は、姉の一家に誘われて高輪の広大な借家へ移った。大玄関があり、座敷は五十畳と二十五畳、二階にも大きな部屋がある。家賃の安さに驚きながら越して三日目、初めて見る魚屋が貝柱を売りに来た。代金は後でよいと言い残して帰ったが、その晩十二時頃から大人たちが次々に吐き始め、医者は流行性の腸カタルだと言った。夜が明けると全員けろりと治っていたのに、あの魚屋は二度と姿を見せず、金も取りに来なかった。以後、小山内の留守中は十二時を過ぎると必ず門を叩く音がし、走るはずのない汽車の音が響いたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
あの世はあった―文豪たちは見た、ふるえた(三浦正雄・矢原秀人・2006年(平成18年))
『あの世はあった――文豪たちは見た!ふるえた!』は、三浦正雄と矢原秀人が二〇〇六年に著した、近代日本の作家や知識人の霊体験を紹介する読み物である。熱海の旅館で遠藤周作と三浦朱門が同時に遭った幽霊、佐藤愛子の心霊現象、菊池寛・宮沢賢治・小泉八雲・土井晩翠・新渡戸稲造・南方熊楠らの体験、夏目漱石の臨死体験を、本人や周囲の文章を引いて語る。一人一章の全十二章にまえがき・あとがきを添え、巻末に霊媒クランドン夫人の実験記録を付録として収める。