狐穴に餌を配る天籟寺のノーセンギョウ
どんな伝承か
北九州市戸畑区の天籟寺はもともとキツネの多い土地で、周囲の丘陵の谷口には狐穴がいくつも口を開けていた。明治のころには、夕暮れに牛を追って畑から帰る百姓の後を、キツネが同じ間合いを保ったまま家の近くまで付いてくることが珍しくなかったという。そのためかノーセンギョウと呼ぶ行事があり、寒の内にアズキ飯へ油揚げを添えて狐穴の口に置いて回った。大正から昭和の初めにはおセキさんという野狐使いがいて、その人を中心に信者が熱心にこの行を歩いた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
北九州市史 民俗(北九州市・北九州市史)
『北九州市史 民俗』は、北九州市が編んだ市史の民俗編である。ここに収めるのはその第三編「信仰伝承」第一章「信仰」の第二節以降で、門司・小倉・若松・八幡・戸畑の各区に伝わる聖地と忌地、神仏信仰、神事と法会、巡礼、巫者・祈禱師、信仰集団、狐憑きや犬神などの憑霊・霊異現象を記す。節ごとに地区と地名を挙げて事例を並べる編み方で、祟る石や産女石、落人の墓なども忌地の項に見える。