木曽の卯月八日・門口に花を挿す
どんな伝承か
明治四十二年五月二十八日、木曽福島に泊まった朝の記である。一昨日が旧暦四月八日で、家々の門口には花を挿している。また軒に菖蒲のように葺いたものもある。花はツツジや藤で、山吹も門の柱にくくり付けてある。卯月八日にもこういう風習はあるのだと柳田は書き留めた。家々は板壁で土を塗るものはまことに少なく、土は湿気てよくないなどという。板屋には隙間が多く寒そうである。年中木を焚くことが多く、長さ三尺、高さと横が各六尺の量を一間といい、一冬に五十間を消費する家も珍しくない。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第3巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第3巻』は、柳田国男の紀行・日記・随筆を集めた著作集の一巻である。相模・武蔵の村々を歩いた「水曜手帖」、昭和二十三年八月の自序を持つ「北国紀行」、明治四十三年の「五十年前の伊豆日記」、国際聯盟の委任統治委員会に勤めた大正十一年の「瑞西日記」と「ジュネーブの思ひ出 その他」を収める。後半の「菅江真澄」は昭和十七年二月の序を付け、真澄の著述と旅の跡を年を追ってたどり、写真解説を添える。