下蚊屋の塗師屋と大岩助左衛門の狂歌
どんな伝承か
出雲に近い日野郡米沢村大字下蚊屋は、今は漆器の産地として知られている。小椋広太郎という家がこれに携わる旧家で、先祖の小椋尊房は江州日野の木地屋であったが、多数の同業と連れ立ってこの地へ移って来た。慶安中のことというが、二十六、七代前ともいうから、どちらかが誤りである。近江の方では蛭谷の大岩氏にこんな話が伝わる。中興の祖とする助左衛門重次が元和六年に国々を巡ってこの村へ来て木地職の小屋を訪ねると、我々はもう木地屋をやめて今は塗師屋になっていると、至って等閑な待遇をするので、「これたかの流れの末はさがりかや木地屋をぬしとぬつたりはげたり」と詠んで見せた。皆々感じ入って心得違いを悟り、改めて先例を守ることになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。