上巳の日に門へ挿す蒜
どんな伝承か
大多喜の俗に、上巳の日には、端午に菖蒲を門に挿すのと同じように、その日の家々の門に蒜(ノビル)を挿して悪鬼を払うという。『房総志料』にその風習が見え、口碑としても伝えられている。著者は、これは「釈氏雑記」に見える「くねちのさうやく(九年母の草薬)」のような事柄が転訛したものではあるまいかと考えている。
原典より
大多喜の俗に、上巳の日に、端午の菖蒲を門に挿むやうに、その日の戸々の門に、蒜(ノビル)を挿んで(「房総志料」)、悪鬼を払ふと言つてゐる(口碑)のは、「釈氏雑記」に、『これこそ、くねちのさうやく(九年母の草薬)。—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。