古里程が生んだ九十九里浜の名
どんな伝承か
上総長生郡の東浪見浦から下総海上郡の飯岡浦まで、この間の行程十五里ばかりは一帯の砂場で、岩石の類もなく、ほとんど一望で見渡すことができる。里俗に九十九里浜と言っているのはこの間の浦の浜で、これは古く六町をもって一里とした時代の呼称である。いま古い里程で十五里すなわち五百四十町をはかると九十里となり、この間はやがて百里に近いというところから、九十九里の浜という名が出たものであろう。古い里程をもって地名の呼称とした例はほかにもあり、「上総の七里」はこの間四十二町で、今の里数にすれば一里六町であるが、古く六町を一里とした時代の里程に直せばちょうど七里に当たるのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。