楠の洞から現れた舎利光観世音
どんな伝承か
蓮沼村沼区の日蓮宗の古刹称念寺の本尊、舎利光観世音菩薩には不思議な伝説がある。昔、住持の日保が夢に、伊豆の奈古谷寺の山中に観世音の霊像があるから迎えに来よとのお告げを受け、訪ねて行くと、奈古谷寺の住持も日保が来ると夢に見ていた。二人で霊跡を尋ねると白鷺が現れ、朽ちた楠の洞に観世音の霊像があった。観応四年五月十八日のことという。像は蓮沼に迎えられ、後に弟子の日栄の夢に、行基の命で刻まれた七躯の一つで仏舎利を眼に籠めたものだと告げがあり、舎利光観世音と称した。享保の頃、江戸出開帳の折に泉屋伊兵衛方へ預けられたままになったが、名主金右衛門が私財で迎え戻した。寺には楠の洞から出た観音の眼が伝わる。
原典より
蓮沼村沼区に、称念寺という日蓮宗の古刹があるが、此処に、舎利光観世音菩薩と称せられる本尊の上には、不思議な伝説が語り継がれている。—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。