矢指大明神と九十九里の杭
どんな伝承か
上総の一部から下総の端まで、一里ごとに杭を一基ずつ立て、この地まで九十九本を数えたので、六町を一里として九十九里と呼んだという。矢指ヶ浦にはその折の矢指大明神が祀られ、社の祭神は矢だと伝える。一説には日本武尊が矢を射ると一度に六町ずつ飛び、九十九本の矢を通したので、その矢と弓を祀ったともいうが、信じがたい口碑である。蓮沼村の名は大きな蓮沼があったことに由来し、浜には白帆が行き交い、湊の入口では逆浪が響く。村には中根山極楽寺という浄土宗の大刹があり、本尊の阿弥陀如来は九十九里随一と札に記され、里人は死者の四十九日に四十九か所の寺院を参詣するという。
原典より
上総の一部、下総の端から、一里に杭を一基立てて、此地(白里村)まで、九十九里を立てた。—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。