婿を泥にまみれさせる利根川畔の明神祭
どんな伝承か
猿島郡の旧水堀村に、おっ腹くってう明神という神がある。昔、大水のときに流れ着いたものを、草を刈る者が見つけて引き上げようとしたが、重くてなかなか動かない。そこで棚に繋ぎ置き、人々を集めて食を供したうえ、「おっぱらくっちょう、えんさらほう」と囃しながらこれを揚げて祀ったという。今もその祭には婿をめぐる奇習がある。祭りの日、利根川の畔にある十間四方ばかりの池の泥を取って婿に塗りつけ、「おっぱらくっちょう、えんざんぼう、いつもかうなら、よおかんべえ」と囃したてる。婿が困り果てているところへ、その妻である新婦が出て詫び、泥を落として利根川で身を清め、新婦の持参した新しい衣に着替えさせるのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 下総の巻(藤澤衛彦・日本伝説叢書・1919年(大正8年))
『日本伝説叢書 下総の巻』は、藤澤衛彦が編著し、大正七年の緒言と大正八年の序を添えた下総国の伝説集である。平将門・佐倉宗吾・真間の手児奈・累などを中心に、千葉県と茨城県西部にまたがる旧下総の城跡・寺社・墓・橋・井戸などにまつわる伝説を、地誌や古記録の引用を交えて収める。緒言で百七十九編を収めると述べ、国名の由来から始めて、話ごとに所在の町村名を付した見出しを立てて並べる。