水浴びの上流を駆け登るブナガヤ
どんな伝承か
話者が娘だったころ、女友だち数人と東村字車泊へ山仕事の出稼ぎに行っていた時の話。仕事を終えてみんなで水浴びをしていると、川の上流の山手で、背丈二尺ほどの薄赤茶色の生き物が山の上へ駆け登っていくのが見えた。瞬きもせず見つめるうちに、ブナガヤだと気づいた。友だちに指さして教えたが誰も見届けられず、姿はやがて消えた。見えなかった友だちからは、誰にも見えないものを見る馬鹿者とののしられ、悔しくて忘れられないという。以来そこへは行かず、馬鹿にされるのであまり人に話さなかったが、確かにこの目で見たと話者は語る。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。