丸木橋から娘を引き込んだ秤石淵のかんちき
どんな伝承か
山梨県南都留郡道志村の小椿の、百六歳になるおかめ婆さんという人が、十歳になる娘を連れてわらび採りに出かけた。大川へ降りて丸木橋を渡ろうとすると、娘はしきりに川向うに小児がいると訴えたが、婆さんの眼には少しもそれらしいものが映らない。娘が橋の半ばまで渡りかかると小児は見えなくなり、娘は丸木橋から転落して急流に姿を消した。婆さんは激流に飛び込み、下砂原まで押し流されながら白渦の中を狂い廻ったが、娘の骸は腹を空にされて浮かび上がった。かんちきはこの頃、砂原近くの秤石淵という大淵の底に棲み、人の尻ごう玉から細い手を差し入れて五臓六腑を引き出して食べていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。