阿賀の川で尻を抜かれた子ら
どんな伝承か
新潟県の旧豊栄市大迎に住んでいた人の回想である。大正十五年ごろ、小学生だった話者にとって泳ぎ場といえば、歩いて行ける阿賀の川の川原だった。大きな流れで、泳ぐうちに深みへはまって溺れ死ぬ子どもが少なくなかった。そうした子について大人たちが、あれは河童にさらわれたのだ、亡骸を見たら尻を抜かれていたから、と話しているのを何度も耳にしたという。尻を抜かれるとはどういう有様なのか、話者自身は見たことがない。それでも大人が真顔でそう語り合う場面に、たびたび出くわしたと述べている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。