馬に引き上げられた猿猴
どんな伝承か
大正十二、三年頃、尾川から佐川へ行く県道も由留岐橋もまだなかった時分のこと。今の橋から百メートルほど下に残る大きな松の下には千人刎という石があって深い淵になっており、その下の浅瀬に石橋があった。ある日、岡崎の人が馬の足を冷やしにこの淵へ馬を引き入れ、手綱を河原の石に結んで肥料を出しに行った。淵に棲む猿猴が面白半分に手綱を解いて自分の腹に巻き、馬を深みへ連れ出そうとしたが、馬が河原へ走り戻り、猿猴も引き上げられた。戻った馬主が大石を打ちつけて猿猴を殺し、大松の下の見合地蔵の石段にさらしたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。