墓の花筒の水を飲まされた祝言帰り
どんな伝承か
大正時代から昭和の初め頃の話。隣り合った部落で同じ日に祝言があり、両方に関係のある男が一軒の式をすませて隣部落の式へ向かった。紋付羽織で急いでいると、川の土手道で二、三人が前を行くので、追いついて一緒に行こうと声をかけた——覚えているのはそこまでだった。気がつくと、一張羅の着物に泥田の泥をつけ、羽織の紐や胸いっぱいに田芋やツワの葉をつけて、夜中に元の家へひょっくり戻っていた。妙に臭い茶を一杯飲んだというので翌日調べると、墓の花筒の水を飲んでいた。老爺はエンコウを侮蔑をこめて「こびんす」と呼んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。