怪我人を出さないありがたいせこ
どんな伝承か
せこの立てる激しい音は、慣れない者にはがたがた震えるほど恐ろしいが、長く樵をしている人は、せこが出ないと寂しいくらいだという。山本老のもとで働く六十三歳の爺さんは四十年近く樵を続けており、若い者が怖がって泊まらなかったときも、一人で何日も小屋に泊まり込んだ。爺さんは、せこは決して人に害をしない、それどころかせこが出ると怪我人が出ないからありがたいと笑っていた。せこがわめきながら近づいてきたときは、鑢で鋸の目立てをしてガリガリ鳴らすと嫌がって逃げるが、追い払うとろくなことはないので、しない方がよいという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。