南風の夜に田を飛び歩くケンムンの火
どんな伝承か
鹿児島県大島郡伊仙町伊仙の話。ケンムンというものはいるにはいると思う、どんなものかは見たことがないが、南風が吹いて少しずつ雨もよいのする頃に、あちらこちら火が飛んで歩くのを見る、と話者は語る。ミンチキ田袋(田園)から下の方へ行ったり上に来たりして、音もなく早く飛び、やがて見えなくなってしまう。火の大きさは直径一寸ほどで、いくつもいるのだそうだが、自分が見るのはいつも一つだけである。夜の七、八時頃から十時頃まで見え、他人に知らせても見せても消えることはないという。話者は吉岡徳盛。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。