刺草窪の小屋に響いた天狗笑い
どんな伝承か
長野県下水内郡栄村和山の話。和山から一里半ほど奥へ入ると、刺草窪というところがある。昔は秋の山の口に官沢(国有林)を払い下げてもらい、そこで刺草をはいできて、その繊維で縮を織って着たものだという。集落の捨松さんがそこへ行き、青木の粗朶を折ってぐるりと立てた小屋の中で火を燃し、その明かりで刺草の皮をはいでいた。するとハハァハァハァと笑い声がして、高い山をビンビン響かせた。恐ろしいので声のする方へ鎌の抜身を向けていたが、そうするとなおさら笑う。とうとう恐ろしくなり、夜のしらしら明けに家へ逃げ帰ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。