はるさんの声で呼ぶ天狗の下駄音
どんな伝承か
富山県西礪波郡福岡町(現・高岡市)の話。天狗は悪いことをしないもので、背戸の家の杉の木にも、前の家の隣りの裏の木にも天狗がいるとよく聞かされていた。語り手が小学校の三、四年、七十年ほど昔の十二月のこと、暗くなってから上の子と次の子が渋抜き柿をもんで喧嘩をしていると、母が「暗くなってから喧嘩をしていると天狗が来るぞ」と言った。その夜八時半頃、前の大通りをキリンコロンと下駄の音が近づき、玄関の前で親戚の子の声そっくりに三度呼ばわった。ランプを下げて戸を開けたが、柿も姿もない。それでいて下駄の音だけが聞こえた。母は天狗がからかいに来たのだと言ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。