袖越しに見えた護摩壇の天狗たち
どんな伝承か
南方熊楠が書き留めた話。長島全三郎という人は十四歳のころ、明治二十年ごろかとされる時期に、生駒山の寺へ預けられていた。寺では毎年四月一日に大法会があり、吉野郡天川村の洞川から前鬼の和尚と呼ばれる人がやって来た。ある年、寺の小僧が法会に天狗を連れてきてとせがむと、和尚は応じ、松の木の上で遊ぶ七、八歳ほどの子ども数人を天狗だと示した。大人の天狗をとねだると、翌年和尚は一人で来て護摩壇を指した。何も見えないが、和尚が衣の袖をかざして透かして見せると、壇のまわりに天狗がひしめいていた。僧と変わらぬ衣や袈裟の者が多く、中には鼻が極端に高く上下に曲がった者もいたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。