天狗がついた大渡の山中秋光
どんな伝承か
高知県吾川郡池川町大渡の話。明治三十七年三月十五日に六十一歳で死んだ山中秋光は、生前「てんぐ」が憑いていると人に言われていた。年老いた頃、高岡で稲に虫がついたので祓いを頼まれて行くと、隣の田の持ち主が老いぼれには何もできまいと遠くで悪口を言った。普通なら聞こえるはずがないのに秋光には聞こえ、稲についた虫をすべて隣の田に集めてしまったという。また大渡の奥の椿山という部落から石鎚山へ登るとき、年寄りで初めは遅れるが、行を済ませて登ると皆より速くなった。祈禱の礼を惜しんで金を石垣に隠した者には、終わってから「あの石垣に入れた金も持って帰れ」と言い当てたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。